保健所におけるTICに関する実態把握

我が国の精神保健医療福祉の行政の取り組みの実態を把握するための調査を精神保健福祉センターと保健所を対象として行いました。今回は保健所の調査結果の紹介です。

保健所は感染症や自然災害対応や衛生管理、地域住民の健康増進など精神保健福祉センターに比べて、業務が広範であり、精神保健福祉以外の業務も担っています。そうした施設特性もあり調査結果は、精神保健福祉センターとは異なる傾向が示されました。

回答率は47の保健所うち、31の施設から回答が得られました(66.0%)。「TICという言葉を聞いたことはありますか?」については、「ある」と回答したのは22.6%、概念について「具体的に少しは知っている」と回答したのは6.5%、「TICに関する何かしらの取り組みを行っていますか?」について既に取り組みを行っている保健所はありませんでした。精神保健福祉センターに比べるといずれも割合は少なく、これは普段の業務の性質が大きく影響している可能性も大きいかもしれません。

一方で、研修を行う必要性について、「とても必要を感じる/必要を感じる」は32.2%、また、既存研修にTICに関する研修を取り入れることについて58.1%が工夫すれば可能であると回答しており、普段からトラウマ対応を行うことが比較的あるなど、日常業務の内容との親和性が高い保健所にTICを導入していただくことは、将来的なTICの地域展開を考える際の一つの土台となり得るかもしれません。

臼田謙太郎
(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所公共精神健康医療研究部)