COVID-19に関する救援活動を行った医療従事者のPTSD症状とTIC

これまで、所属病院外においてCOVID-19等の新興感染症に対応した医療従事者のメンタルヘルスの状態やメンタルヘルスの悪化の関連要因は明らかにされていませんでした。

東京大学大学院医学系研究科精神保健学・精神看護学分野では、2020年2月から3月にかけて所属病院外(ダイアモンドプリンセス号など)でCOVID-19の救援活動を行った災害派遣医療チーム(DMAT)および災害派遣精神医療チーム(DPAT)に所属する医療従事者を対象とした調査を行いました。その結果、身体的・精神的疲労と、救援活動の最中に感じた精神的苦痛とが心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状関連することが示されました。

救援活動の最中の精神的苦痛に関しては、「気を失いそうになった」「失禁しそうになった」といった項目が特にPTSD症状との関連が強く、これは防護衣・N95マスク等の着用のため、定期的に休息をとったりトイレに行ったりしにくかったことが原因として考えられました。また、「感情的になった自分を恥じた」「感情的に取り乱しそうになった」という項目も比較的強くPTSD症状と関連していました。

この研究はPsychiatry and Clinical Neurosciencesに2020年7月21日付で掲載されました。
Hiroki Asaoka, Yuichi Koido, Yuzuru Kawashima, Miki Ikeda, Yuki Miyamoto, Daisuke Nishi. Posttraumatic stress symptoms among medical rescue workers exposed to COVID-19 in Japan. Psychiatry Clin Neurosci. 2020; 74(9): 503-505. https://doi.org/10.1111/pcn.13092

本研究成果から、TICの「6つの主要原則」である安全や信頼性、ピア・サポート等は、COVID-19に対応する医療従事者においても重要なのではないかと考えられました。


筆者:浅岡紘季
東京大学大学院医学系研究科精神看護学分野