子どもの養育支援を行う児童福祉の現場では、職員の方々は業務の中で、虐待やDVの目撃など様々なトラウマ体験をしやすく、それによるPTSD症状が業務の質に悪影響を与えうることが指摘されています。
東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野では、児童相談所職員の方々の仕事でのトラウマ(心的外傷)体験とPTSD(心的外傷後ストレス障害)症状との関連を調査しました。
その結果、87.1%の方が1つ以上のトラウマ体験をしていました。勤務中に、親が子ども、またはもう片方の親に対して、殴る、叩く、蹴るなど重傷を負いそうな暴力をふるうのを目撃した体験がPTSD症状と関連していました。また、経験したトラウマ体験の種類が一定数以上になると、PTSD症状との関連が強くなることが明らかになりました。
この研究結果はInternational Journal of Environmental Research and Public Healthに2021年4月9日付で掲載されました。
Association between Work-Related Trauma Exposure and Posttraumatic Stress Symptoms among Child Welfare Workers in Japan: A Cross-Sectional Study. https://www.mdpi.com/1660-4601/18/7/3541
児童福祉の現場では、支援者である職員も、支援を受ける子どもや親も、トラウマ体験の影響を受けている可能性があります。
支援者が、自分自身と支援を受ける側のトラウマ体験の影響を知ることも、トラウマインフォームドケアの4つのRの「理解する」に当てはまり、双方の再トラウマの予防や良い支援につながるのではないかと考えられます。
筆者:片岡真由美
東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野