精神保健福祉センターにおけるTICに関する実態把握

わが国においてTIC(トラウマインフォームドケア)の実践に向けた取り組みは行政的な取り組みも含めて、まだ全国的に広まっているとは言えません。

私たちは、今後TICの実践を行っていくに向けて地域における土台となる、精神保健福祉センター(以下、センター)におけるTICに関する現状での実践状況やニーズを明らかにする実態把握調査をセンター長を対象に行いました。

回答率は82.6%で、「TICという言葉を聞いたことはありますか?」については、「ある」と回答したのは80.7%、概念について具体的に少しはよく知っている/少しは知っている」と回答したのは64.9%でした。半数以上のセンターはTICについてある程度知識を持っているという現状が明らかになりました。

一方で、TICに関する何かしらの取り組みを行っていますか?」について、「取り組みを行っている」については21.1%のみでした。しかし、行っていないセンターの中で、「対外的なTICの研修を行う必要性」については「とても必要を感じる/必要を感じる」が59.6%と、多くのセンターが実施の必要性を感じているという結果でした。

また、実施していないセンターのうち、「既存のセンター主催の研修の中にTICについて取り入れることが可能」と9割近くのセンターが回答しています。行政的な視点からTICを普及させていく際に、精神保健福祉センターが土台の一つとなる可能性が示唆されました。

臼田謙太郎
(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所公共精神健康医療研究部)