心理的応急処置(PFA)とTIC

心理的応急処置(Psychological First Aid : PFA)は、災害直後の人々の急性の心理的苦痛を和らげ、継続的なメンタルヘルスケアの必要性を評価するために開発されたトレーニングです。PFAはTICについて有効なトレーニングである可能性がありますが、PFAの研修の受講経験とTICとの関連は明らかにされていませんでした。

東京大学大学院医学系研究科精神保健学・精神看護学分野では、2021年5月から6月にかけて災害派遣医療チーム(DMAT)および災害派遣精神医療チーム(DPAT)に所属する医療従事者を対象とした調査を行いました。その結果、心理的応急処置(PFA)の研修の受講経験がある医療従事者は、受講経験のない医療従事者よりもTICに対する態度が高いことが示されました。

本研究は、医療従事者のPFA研修の受講とTICに対する態度との関連を示した初めての研究であり、PFA研修を受講することの新たな効果を示しました。医療従事者はPFA研修を受講することで、TICに対する態度が向上し、トラウマを経験された方にトラウマに配慮したより良いケアを行える可能性が示唆されました。この結果は、今後のPFA研修、TIC、トラウマケアに関する研究にとって重要な結果であると考えられました。

この研究はDisaster Medicine and Public Health Preparednessに2023年8月3日付で掲載されました。
Asaoka H, Koido Y, Kawashima Y, Ikeda M, Miyamoto Y, Nishi D. Association Between Attitudes Toward Trauma Informed Care and Psychological First-Aid Training Experience Among Health Care Professionals in Japan. Disaster Med Public Health Prep. 2023;17:e443. https://doi.org/10.1017/dmp.2023.103

浅岡紘季
東京大学大学院医学系研究科精神看護学分野